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日本グリーフ専門士協会 ブログ

もしかして「うつ病」。その判断の前に知っておきたいこと。

いかがお過ごしでしょうか。
日本グリーフ専門士協会の井手敏郎です。
 
少しずつサイトを訪問してくださる方が増えており、
とても感謝しています。
  
今回は、グリーフとうつ病との違いについて考えてみたいと思います。
どちらも症状は似ていますが、
意識しておきたい点は一体どこなのでしょう。
 
喪失体験をすると先に書いたように、
不眠、仮眠、拒食、過食、頭痛、緊張、無感覚、記憶障害……
さまざまな身体の状態になります。
 
しかし、それらは必ずしも病気ではありません。
 
たしかに「更年期障害」「うつ病」「認知症」……
と診断されそうな症状なので、
自分だけで判断するのは気をつける必要があります。
 
しかし、喪失を体験すれば、
誰もがこのような状態になると考えるのが、
「グリーフ」であり、「グリーフケア」の基本です。
 
なぜ大切な人を失うと身体症状として現れるのでしょうか。

少し変わった言い方をすると、
それは「私自身を喪失した体験」と考えても過言ではないからです。
 
「大事な人を喪失した体験」ではなく、
「私自身を喪失した体験」です。
 
考えてみると私たちの「自分らしさ」というものは、
自分一人つくっているわけではありません。
 
たとえば自分らしさは「すごく真面目」だとします。
その理由を探ると、
「父親の影響とか」
「友達がとても真面目な人だった」
「尊敬している先生を見習って」
など、周りの人から受けた印象や言葉に動かされてのことが
ほとんどではないでしょうか。

たとえば自分の性格にあう仕事を見つけたいという場合、
仕事を始めから自分で決めたつもりの人でも、
どこかで見たり感じたりしたことをきっかけとして、
何らかの影響が及んでいるはずです。
 
それが仮に反面教師のような形でもあっても、
「自分らしさ」は「自分だけで決めた」とはいい難いものです。
 
何がいいたいのかというと、
通常「自分らしさ」というものは、
周りの人から受けた影響が大きいということです。

もちろん、環境と同様にその人のもって生まれた
特有の考え方もあります。

それについては後述しますが、
周囲の誰かを失ったということは、
自分の一部を構成している何かを喪失したということであり、
自分自身を喪失した体験と考えても過言ではないということです。
 
もしあなたの身体の一部、
たとえば右腕が何らかの理由で一本失われたとしましょう。
 
その影響は不便ということだけで片付けられることでしょうか。
 
そのことを考えたら寝れない、
反対に一日中布団をかぶっていたい、
とても食事をとる気持ちになれない、
あるいは、居たたまれない気持ちで食べずにいられない、
という場合もあるでしょう。
 
それらはすべて人として自然な反応です。
 
片腕が無くなったのです。
まわりの人と関わることに積極的になれず、
仕事に行きたくない、もう何にもしたくない、
という気持ちになっても少しもおかしくありません。
 
記憶障害はどうでしょうか。
突然、右腕が奪われたのです。
もし相手がいれば、つよい恨みや憎しみもあるかもしれません。
これからのことで頭が一杯でとても物事を覚えていられる心境ではないはずです。
 
ですから、記憶がままならないことがあっても当然といえます。
身体に起きているさまざまな症状が、 
かつても喪失体験の影響である可能性は少なくありません。

病気にとらわれた判断をせず、
しっかり向き合ってくれる身近な人や、
グリーフを理解した専門家に話すことが大切です。
このブログを読むことがそのヒントになれば有り難いと思っています。

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井手 敏郎(いで としろう)

井手 敏郎(いで としろう)

日本グリーフ専門士協会の代表理事。 全国各地で現場で使える実践的なグリーフケアの技術を教える講義を行っている。 アドラー心理学やユングの分析心理学、フロイトの精神分析などの他、国内外のコーチング、カウンセリングやヒプノセラピーなどについても学んでいる。現在はカルフォルニア臨床心理大学院で臨床心理の研究を行う。

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