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日本グリーフ専門士協会 ブログ

罪悪感を抱えた人と向き合うときに気をつけたいこと

こんにちは。
日本グリーフ専門士協会の井手敏郎です。
 
私は納棺士(おくりびと)養成学校で講義をすることがあります。
アカデミー賞をとり話題になった
映画『おくりびと』の手技を学ぶ学校です。
 
私の場合、手技は伝えられませんので、
「死とどう向き合うか」というテーマで、
学校の立ち上げ時から3年間、
続けて関わらせて頂いています。
  
彼ら納棺士も少なからず向き合うことですが、
ご遺族との関わりの中で、
頭に置いておきたい重要テーマが、
怒りや罪悪感を自分なりにどう処理していくかということです。

怒りは何らかの問題が生じたとき、
その原因をほかの誰かに向けたときに起きるものであり、
罪悪感はその問題の原因を自身に向けたときに起きる感情です。
  
ご本人にとってとてもつらいことですが、
大切な人を失った後、罪悪感を抱える方も少なくありません。

私にも忘れられない話があります。
 
実家のある茨城県で知り合ったある男性の話です。
彼は日常的に奥さんをけなすことが多かったといいます。
  
ある朝、むしゃくしゃしていたという彼は、
「こんなまずいものが食えるか、馬鹿やろう」
と奥さんに吐き捨て、
後ろを振り返ることもなく、会社へ出かけていきました。
  
奥さんの訃報が届いたのは、それから3時間後のことでした。
買い物の帰り、バイクを走らせていた彼女は、
車と衝突し、帰らぬ人となったのです。

周囲には、人参、ジャガイモ、タマネギ……。
夫の好物だったカレーの材料が散乱していたといいます。

「なんであんなことをいったのか、本当の馬鹿は俺です」
自分が奥さんに向けた最後の言葉に
10年以上苦しめられてきたと告白しました。
 
周囲に、あなたが悪い訳ではないとどれだけ慰められても、
自分を許すことができず、人知れず苦しんできたそうです。
 
悩ん苦しんでいる方を見たとき、
「そんなことない」
「あなたは悪くない」
といってあげたいときがあります。
たしかに、そのような言葉に救われる人もいるでしょう。
 
しかし、
もしあのとき優しい言葉をかけていれば、
自分が手伝っていったら、
はやく気がついていたら、
という後悔の念は、
周囲のなぐさめで簡単に消えるものではありません。

ではどう向き合えばいいのでしょうか。
 
経験的には、
ご本人が罪をどのように感じていらっしゃるのかを
しっかりお聞きすることが大切だと思います。
 
罪意識を感じていることはなんなのか。
なぜそのように感じているのか。
ほかに罪悪を抱えていることはあるのか、などです。
 
少し話を聞いて、
「そんなことはない」
「あなただけが悪いだけではない」
と伝えても、相手の気持ちは切り替わりません。

本当に後悔していることを聞きながら、
クライアント自身がしっかりその哀しみを味わうことが必要なのです。
 
自分の後悔や懺悔を誰かに告白したあとで、
そうはいっても奥さんにできたこと、
これまでの人生で努力してきたこと、
一緒に生きてよかったことなどをお聞きすると
思わぬ言葉が出てくることがあります。

いつくか大事なポイントはありますが、
まずは相手の罪悪感を否定せず、
その気持ちを具体的に丁寧にお聞きすることが始めです。

それから、本人なりに努力したことにも目を向けていくこと。
経験的には、前を向けない方の多くが、
哀しみをしっかり味わっていないことが大きな理由だと感じます。

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井手 敏郎(いで としろう)

井手 敏郎(いで としろう)

日本グリーフ専門士協会の代表理事。 全国各地で現場で使える実践的なグリーフケアの技術を教える講義を行っている。 アドラー心理学やユングの分析心理学、フロイトの精神分析などの他、国内外のコーチング、カウンセリングやヒプノセラピーなどについても学んでいる。現在はカルフォルニア臨床心理大学院で臨床心理の研究を行う。

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