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日本グリーフ専門士協会 ブログ

災害時に本当に必要なもの

 
おはようございます。
日本グリーフ専門士協会の井手敏郎です。
   
現地で改めて感じた事があります。
私自身はカウンセラーですが、
カウンセリングに代表されるメンタル支援は、
もともと関係があったり、特別な要請以外、
災害の初期にはあまり求められていないのも事実です。
 
もちろん、非常時だからこそおろそかになりがちな、
話の相手になれる存在は大きいものです。
  
しかし肉体面の安全がある程度確保されるのが優先であり、
その中で、もし求められばカウンセリングも、
という程度に考えるのが大切だと思います。
 
◎欲しいものは自ら発信する
  
かなり重要なのは、
必要なものが刻一刻と変化しているという事実です。
停電や断水が復旧するタイミングは隣の市、
もっというと隣の家同士でも異なります。
 
電気、水道などのライフラインが止まったある施設は、
隣町も同じような状況と考え、 
県外にガスボンベやガス釜がないかと探しても調達できず、
50人以上の利用者を抱えながら、3日間、
まともな飲食の用意ができない状況が続きました。
 
しかし車で20分ほどの施設では1日以上早く電気が通り、
ボンベもガス釜も貸せる状況にありました。
 
SNSなどで今必要なものを自ら発信し、
周囲に気づいてもらうことは大切です。
 
◎食べ物や飲み物は常に必要
 
水が確保できないと思っていたところ、
急遽、水が大量に入ったと市から案内されたり、
水は大丈夫と安心していると、
足りなくなったと案内があったり、
どんどん変化していきます。
  
急に人が殺到することも多く、
必要な人に必要なものが届きにくくなっています。
 
その意味でも、日持ちする食料や飲料は有難いです。
熊本では大きな揺れから一旦落ち着いたと思った矢先に本震。
大きな余震が続いたため、停電や断水の普及が繰り返され、
いまだ不安定です。
 
コンビニは地震後3日間、ほとんど空いてない状況。
やっと見つけたコンビニでは、
すべての食べ物、お菓子が棚から消えていました。
 
お菓子だけで4日間食いつないだ人がいる一方で、 
最初の地震から4日過ぎても、
一切甘いものを口にできなかった人も少なくありません。
その意味で、食べ物、お菓子、飲料の補給は基本的に助かります。
  
とはいえ、輸送システムが十分機能せず、
物資がなかなか届かない現状なので、
直接持ち込んでくれるのが一番有り難いです。
   
◎気持ちは有り難いが要らないもの
 
千羽鶴、古着、中古本は、
正直、現場では役に立ちません。
 
避難する体育館や施設は狭いことも多く、
寝る場所にも事欠くため、
本当に必要なもの以外はかえって邪魔になります。
  
結果的にゴミ処理同様の手間が増えることになるのです。
一筆だけでも気持ちは届くと思います。
 
寒いのは間違いありませんが、
誰のものかわからない服に袖を通すくらいなら、
汚れた自分の服のままでいいという声も聞きました。
 
ですがタオルは結構活躍します。
新しいものに越したことはありませんが、 
汚れたものを拭く場面も多く、
タオルの場合は古いものでも役立ちます。
 
◎箱の外に内容を記す
 
避難場所に積み上げられた箱を見ると、
中身が何かわからないものも多くありました。
 
送ることができる場合でも、
必要な人に届くように、
箱の外に種類別に内容を記す配慮が大切だと思います。
それがないと選別に時間を奪われ、
むしろ現場の負担になることがあるからです。
  
◎オムツは活躍する
 
やはり健康はトイレからと感じます。
 
水が流れないため、被災地は異臭を放つことも少なくありません。
地震が起きた時は、できるだけ早く
風呂桶などで水を確保することは大切です。

設置された簡易トイレの状況はひどく、
利用するのを躊躇するものばかりでした。
 
かといって野○をすることもできません。
非常手段としてオムツはかなり活躍します。
    
トイレの衛生が保たれなければ、
水を飲むことを控え、便秘になり、体の状態は悪化します。
   
ですから被災した時は、
飲料にとどまらず、トイレ用として、
「まずガスを消す」のと同じくらい、
「まず水を出す」という感覚が大切です。
     
◎結局お金は有り難い
 
これからどうすればという声の多くは、
やはりお金の懸念です。
お金はすぐには使えませんが、
今後のことを考えるとやはり一番有難いものです。
 
傾斜した家や壊れたブロック塀、
ガチャガチャになった室内を見ると
本当に大変だと感じます。
 
あからさまにいうのははばかられるでしょうが、
以前のテレビドラマで話題になったフレーズ
「心配するなら金をくれ」は被災者の本音だと思います。
 
◎祈ることは……
 
「祈るだけでは意味がない」
という投稿を見ましたが、私はそうは思いません。
   
何をすればいいかわからないと手をこまねいている人が、
「何もできないけど復旧を祈っています」
という言葉には、何度も励まされ、嬉しく感じられました。
  
自分たちを気にしてくれている。
心をかけてくれている。
それだけでも力は実際にでました。
やはり気持ちは届きます。
 
心に留めておきたい文章があります。
かつてノーベル平和賞を受賞した
ユダヤ人作家エリ・ヴィーゼル氏の言葉です。
 
「今日我々は知っている。愛の反対は憎しみではない。
無関心である。信頼の反対は傲慢ではない。
無関心である。文化の反対は無知ではない。
無関心である。芸術の反対は醜さではない。無関心である。
平和の反対は、平和と戦争に対する無関心である。
無関心が悪なのである。
無関心は精神の牢獄であり、我われの魂の辱めなのだ」
 
情報は玉石混交です。
ここに書いたことも石が混じり、
十分な玉がないかもしれません。
 
自分の生活を止める必要はありませんが、
独りよがりにならないためにも、
今本当に必要なものが何かを考え続けることは大切です。
 
思いがけず居合わせた熊本の惨事でした。
多くの方の温かいご協力をいただき、
今日一旦熊本を離れますが、また近いうちに参ります。
無関心な傍観者とならないように、自戒を込めて書きました。

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井手 敏郎(いで としろう)

井手 敏郎(いで としろう)

日本グリーフ専門士協会の代表理事。 全国各地で現場で使える実践的なグリーフケアの技術を教える講義を行っている。 アドラー心理学やユングの分析心理学、フロイトの精神分析などの他、国内外のコーチング、カウンセリングやヒプノセラピーなどについても学んでいる。現在はカルフォルニア臨床心理大学院で臨床心理の研究を行う。

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