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日本グリーフ専門士協会 ブログ

息子の死、それでも泣けなかった訳

日本グリーフ専門士協会の井手敏郎です。

震災から数え、3度目の熊本入りですが、
来るなりすごい豪雨に見舞われ、
宿泊でお世話になっているグループホームでは入居者の方を避難させるか否か、
ギリギリの判断の中でご一緒させてもらいました。
幸いなんとか堤防の決壊は逃れ、朝を迎えました。

今回は「怒り」について触れていきます。

最近、高校生だった息子さんを亡くした女性とお話しする機会がありました。

彼女の息子さんは5年前、事故で亡くなりました。
夜に自転車に乗っていた時、車にぶつかったといいます。
相手は飲酒でした。

ところが彼女は、
加害者が上司に無理やり飲まされた事情、
法的に重い処罰が下されること、
誠意をもって頭を下げ続ける姿……、
それ以上、相手を責めることができなかったというのです。

「相手も同じくらいのお子さんがいて、本当に反省してる。
とっても真面目な人だとわかるから」

それを聞いた友人が激怒しました。

「なんだよ、なにが反省してるだよ、何が真面目だよ、
そいつ飲酒だろ、無理やり飲まされたとか、何言ってんだよ、
そいつ一体何様だよ、飲んだら死んでも乗っちゃいけねぇんだよ、
俺がそいつぶん殴ってやる!そんな奴絶対にゆるさねぇ」

友人の激昂を前に、
深く哀しみながらも事故後、気丈に振る舞っていた彼女は、

「そうだよね……そうだよね……」

自分に許した怒りと共に、
はじめて涙が枯れるまで声をあげられたといいます。

大切なものを失って怒りをあらわにするのは当然のことです。
にもかかわらず、私たちは、
相手にも事情がある、反対の立場なら、
と自らの感情を打ち消すことがあります。

喪失感を持った人が、
目の前で起きた出来事に理不尽さや怒りを抱えるのは当然のことです。

ときにカウンセラーが丁寧に聞く以上に、
友人の素直な気持ちが、
自分の本当の想いに気づかせてくれることがあります。

もしあなたがカウンセラーのような専門的な立場であっても、
専門家として関わる前に人間として向き合う、
私はそれが大事だと思うのです。

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井手 敏郎(いで としろう)

井手 敏郎(いで としろう)

日本グリーフ専門士協会の代表理事。 全国各地で現場で使える実践的なグリーフケアの技術を教える講義を行っている。 アドラー心理学やユングの分析心理学、フロイトの精神分析などの他、国内外のコーチング、カウンセリングやヒプノセラピーなどについても学んでいる。現在はカルフォルニア臨床心理大学院で臨床心理の研究を行う。

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