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日本グリーフ専門士協会 ブログ

不安への対処 | 大切な人を失った後の感情にどう関わればいいのか?

不安の原因(グリーフによって起こる不安な感情)

fuan

日本グリーフ専門士協会の
野村です、

私たちは大切な人を失った時、
「哀しみ」という感情が起こります。

ですが、「哀しい」と感じる前、
失った直後に起こるのは「ショック」
や「混乱」という状態です。

人によっては
「哀しみを感じられない」
といった例外もあります。

ですが、間違いなく言えることは、
失った人間関係がその人にとって
「大切な人」であった程、様々な
感情が起きてくるということです。

哀しみという感情はもちろん、

その他に自分に対して起こる
罪悪感や怒りといった感情、

また恐怖、そして不安という
感情がその人の内側から
起きてきます。

こういった感情は
大切な人を失ってから、
その後も日常的に起き続ける
ということがあります。

グリーフのカウンセリングに
来られる方の中でも、

「日常的に不安を感じる」という
相談を受けることはよくあります。

配偶者など大切な人を失ってから
数年経っているような人でも、
不安な気分で過ごし続けている人は
ほんとうに沢山います。

すこし想像してみてください。

何年もの間、ほぼ毎日「不安」を
感じて過ごすことを。

これは悲嘆にくれている
本人にとって本当につらい状態です。

死別の後も生活は続く

家族や友人などの大切な人を
失った後も、私たちの生活は続きます。

死別の後、しばらくして
元の生活に戻ろうとしても
不安や恐怖などの感情を
強く感じていたら、

それは背中に重たいリュックを
背負って登山をしている
ような状態です。

これが長期間になってくると
心だけでなく、身体的にも
相当な負担がかかってきます。

実はこれは
「喪失の悲嘆(そうしつのひたん)」
(大切な人やモノを失って哀しみに
くれている状態)のなかでは特別な
ことではありません。

こういった人を見ていると、
患者さんやクライアントに
関わる側としてサポートする私たちは

「ずっと哀しんでいるのはよくない」
「なんとかしてあげたい」と感じます。

ですが、

これはムリになんとかしようとして、
なんとかなるものでもないものです。

哀しみを感じているご本人も
「なんとか平静を保たないと」と
考えたりして、感情を抑えつける
ことがあります。

ですが、そんな風に哀しみの感情を
表に出さないこともよくありません
(その理由は後ほど述べます)。

大切なことは、

これは正常な心の反応だとして
捉えること、そして心の反応を
無視しないことです。

こういった反応を
当然のものとして受け入れて、
そして心の発するメッセージを
理解することです。

身体をケガすると痛いように、
心も痛みを感じるのには
大切な目的があります。

もちろんそれは頭では
分かっていても、
かんたんなことでは
ありません。

特に悲嘆にくれている本人に
とっては非常に難しいことです。

ですが、悲嘆にくれた人を
サポートする側の私たちは
きちんと理解しておくことが
大切だと私は考えています。

恐怖・不安の感情が起こる理由

恐怖や不安という感情は
心が感じている痛みです。

喪失の悲嘆の中で、
このような感情が起こるのには
理由があります。

人間の感情には
それが起こる理由があると
考えられていますが、

特にこの2つの種類の感情は
グリーフにおける問題の根源に
当たるものだと言われています。

心理学の専門家の多くは
「恐怖」と「不安」を
それぞれ別のものとして判断します。

ですが、ここではグリーフケアを
行う上での考え方をお伝えしたいので、
詳しく分類するのではなくシンプルに
解釈したいと思います。

恐怖とは明確な対象が
存在している状態で、
それに怯えている状態。

そして不安とは対象が
なにか分からない状態で
それを警戒している状態だと
捉えて考えていきます。

ある女性の話

自動車の事故で夫を亡くした女性は
毎晩、ベッドに入ると身体が
ブルブルと震えて仕方がないと
言っていました。

手や足が震えるという程度ではなく、
身体全体がブルブル・・と震えるのです。

彼女は何かに対して
「立ち向かわなくてはいけない」
そんな風に感じていました。

心臓はバクバクするし、
身体の関節は痛みます。

彼女はとても強く緊張していました。

それにその緊張の原因が分からないので、
それもまた酷いストレスとなっていました。

彼女に起きているのは
「パニック発作」という症状です。

彼女はこんな不安な状態が
週に何度かの頻度で起こっていました。

また、

ある別の男性は家族を
病気で失ってから、常に何かに対して
警戒をするようになっていました。

周りに意識を向け続けて、
実際に何かあるわけでもないのに、
どこにいても不安を感じていました。

日常的に何かに怯えて
警戒している状態なので、
精神的にも疲れきっていました。

こういった症状は死別や
喪失体験をした人に
多く見られる症状です。

まさかこの原因が喪失の悲嘆に
よるものだとは思わないので、

こういった辛い症状に気づいていながら、
でもどうしたら良いのかわからずに
苦しんでいる人はたくさんいます。

こんな時、グリーフ専門士は
どのようにクライアントと
関わるのでしょうか?

不安に対応する心構え

私たちグリーフ専門士は
こういったクライアントさんと
関わるとき、次の3つのポイントを
意識します。

不安を感じている方へ伝える3つの要素

・起こる感情について全てを理解する必要はない
・恐怖の感情は永遠には続かない
・気がおかしくなる訳ではない事を伝える

この3つのポイントを
クライアントさん自身が
理解できるようにコミュニケーションを
取っていきます。

特に不安の感情は「原因がわからず」
ただ怯えている状態なので、

こういったことをクライアント自身に
理解してもらうことは大切です。

とはいえ、もちろんすんなり
理解してもらえるケースは少ないので
慎重に関わっていく必要があります。

強い不安が起きている
クライアントさんは多くの場合、

不安という感情が起きている
その奥では哀しみという感情が
働いているケースが多く見られます。

ご家族を無くしたりしてから
大分期間が経っていても、

その出来事が本人の中で
きちんと消化されていない場合、
その感情は何年も残ったままに
なっています。

そしてそこから不安や恐怖、
怒りという感情が現れるのです。

そういった場合、
過去に起きた出来事に対して
クライアント自身が消化する
プロセスが必要になります。

グリーフ専門士は遺族たちとの
関わりの中で、彼らが哀しみから
再生していくプロセスに寄り添って
いくことを大切にします。

感情を表に出していく

私たちが今回紹介した3つの要素を
意識して関わることで、クライアントさんが
安心しはじめ、感情を表に出すことが
できるようになってきます。

感情にはそれぞれの
メッセージがあります。

例えば、「寂しい」感情は
誰かそばに居て欲しいと感じていますし、
「苛立ち」という感情は理想と現実の
ギャップに腹を立てている状態です。

人間が感じるこういった感情は
外側に出すためにあります。

感情はそれを感じる自分自身との
コミュニケーションともいえるでしょう。

感情を溜め込んでいる状態から、
外側に出していく行為が
改善のプロセスになります。

私たちグリーフケアに
関わる人ができることの1つは、

クライアントが自分自身との
コミュニケーションがスムーズに
できるようにサポートすることだと
私は考えています。

あなたの側にも不安を感じている
患者さんやクライントさんが
いるかもしれません。

彼らと関わるうえで今回の内容が
あなたのお役に立てれば嬉しいです。

日本グリーフ専門士協会
野村優(のむらゆう)

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野村 優(のむら ゆう)

日本グリーフ専門士協会の広報担当。 協会の代表理事 井手の考えに共感して2015年からグリーフケアを広める活動を始める。 厳しい現場で働く看護師、介護士の人が使えるグリーフの知識を分かりやすく伝えるところが評価されている。 ロジカルな説明口調なので冷たいイメージを持たれるが、実際にはよく笑う人当たりの良いキャラクターで周りを和ませている。

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