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日本グリーフ専門士協会 ブログ

【グリーフによる身体の不調を和らげる】3つのかんたんなアプローチ

グリーフの身体への影響
170213blog

本グリーフ専門士協会の
野村です、

今回はグリーフによる身体の不調と
それを和らげるアプローチについて
お伝えしようと思います。

大切な存在を失った方は
感情的な辛さだけではなく
身体の不調で苦しんでいる方も
たくさんいます。

しかも本人は不調の原因が
グリーフによるものだとは
まったく考えないことが
ほとんどです。

そういった方は原因の分からない
身体の不調で苦しんでいたのが、
カウンセリングを受けてから症状が
出なくなって驚かれる事も多いです。

どういった不調があるかというと、
これは一例なのですが、

・動悸がする
・耳鳴りがする
・突然吐き気が起きる
・のどに圧迫感を感じる
・物忘れが激しくなったと感じる
・なにか1つの事に集中できない
・手のひらや背中に汗を頻繁にかく

などの不調を話される方が多いです。

もしかしたら、

「え、こんな症状がグリーフに関係するの?」

と思うかもしれません。

これらすべてがグリーフによって
引き起こされているというワケでは
もちろんありません。

また同じような症状があっても
それがグリーフによるものだと確証は
得られませんが、

カウンセリングを何度か受けた後に
こういった不調が起こらなくなったという
クライアントさんが結構な比率で
いらっしゃいます。

こういったことから、

私は少なくとも彼ら(彼女)に大きな
ショックを与えたグリーフという体験が
身体へも何らかの影響を及ぼしていると
考えています。

グリーフによる身体面の不調に
ついては海外のグリーフケアの現場では
一般的に知られていて、その対処方法に
ついても研究されています。

グリーフを抱えた本人にとっては
不安や恐怖を感じるだけでなく、
理由の分からない吐き気に悩まされたり
なぜか動悸が起こるようになったりすることは
とても強いストレスになります。

しかも原因が分からないので、
そのせいでまた不安な気分が
強くなるという悪いサイクルに
陥ることもあります。

身体症状によって
グリーフの状態に気づく

人間の脳と身体はシステムとして
連動しているので、怒りなどの
ストレスを感じて心拍数が上がると
呼吸が浅く、早くなります。

恐怖を感じている時も
目の瞳孔が大きくなったり
汗をかいたりしますね。

これは感情と自律神経が
関係しているからですが、

こういった身体の症状に
意識を向けてみることで

「実は自分もグリーフを溜めていた」

ということに気づく人も
少なくありません。

南カリフォルニア大学の
脳神経学者アントニオ・ダマシオ博士に
よると、感情は刺激に対して脳が創りだす
「ストーリー」だということです。

外からの刺激にたいして脳が前後の文脈を
解釈して「これだ」という感情(ストーリー)
を起こすと 彼は説明しています。

逆に言うと、

脳の解釈を変えることで
感情と身体への影響を変えることが
できるとも言えます。

これをやっているのが
認知行動療法ですね。

感情が起こる仕組みについては
他にもいくつかの説がありますが、

感情と自律神経は連動していると
いうことはさまざまな脳神経学者たちの
研究で分かってきています。

不安や緊張が続くとストレスが大きくなる理由

自律神経には「交感神経」と
言われる自動車のアクセルの役割と
「副交感神経」というブレーキの
役割をもった2つの要素があります。

以下は中山書店出版の
現代精神医学大系からの引用ですが、

情動変化などのストレッサーが加わると、
まずは交感神経機能亢進がみられるのですが、
刺激の性質や時間的経過によって副交感神経の
機能亢進をきたすこともあります。

情動興奮による自律神経機能は、
おおむね以下の4つのパターンに分類されます。

(1)急性の驚愕・恐怖の際にみられる交感神経興奮
(2)比較的長時間持続する不安・緊張に伴う交感・副交感神経機能の同時亢進
(3)感情の平穏な休息時における副交感神経の相対的機能亢進
(4)失望・憂鬱、悲哀に伴う交感・副交感神経両機能の低下

1979年 現代精神医学大系 山下格先生

これによると
長時間持続する不安・緊張の状態が
続くことで交感神経、副交感神経が
同時に活発化するということです。

これは車のアクセルとブレーキを同時に
踏んでいるようなものなので心だけでなく
身体への負担も大きくなるでしょう。

「自分にとって大切なものを失う」
というグリーフの経験は以前に別の記事で
お伝えしたように、激しい不安やパニック状態を
引き起こすこともあります。

※以前の記事:
不安への対処 | 大切な人を失った後の感情にどう関わればいいのか?

こういったことから
心理的に不安な状態が続くと自律神経に
大きな負担を掛け続けることになります。

その結果、ストレスはより大きくなると
考えられているようです。

襲われる感覚

グリーフによる身体の不調を
抱えている方の心の状態は、

「何かが襲ってくる感じ」を感じたり
「(大切なものから)引き離されてしまった」

と言う風に話されることがあります。

ある女性は何かに襲われるという
感覚をずっと感じていました。

彼女は亡くなった家族の
死の原因が分からなかったそうです。

その時、「自分には何も出来ない」
「無力だ」という感覚を感じていたと
彼女は話しています。

またある男性は、
「引き離されてしまった感覚」
を感じていました。

彼がいつも一緒にいた奥さんが
突然亡くなってしまって、

その後に独りで過ごすという現実を
見た時にそれまでの日常が壊れてしまって
いきなり「孤独になる」と放り出された
感覚を感じたとのことでした。

彼の心の奥底では
亡くなった奥さんとの
「つながり」を感じていたい
という想いがありました。

こういった不安や恐怖を
和らげるためにはどんなことが
できるでしょうか?

グリーフ・カウンセリングを
受けることで改善のプロセスを
進めることができますが、

クライアントさん自身でも
自発的にできるかんたんな
アプローチが3つあります。

不安を和らげる3つのかんたんなアプローチ

・感情を吐き出す時間をとる
・小さな課題をやってみる
・食事を変えてみる

1つめの
「感情を吐き出す時間を取る」

についてです。

感情は表に出すことで
変化します。

大切な人を失った直後でも、
数年経ってからでもグリーフを
抱えている人の心の内側には
深い哀しみがあります。

そういった感情を感じるままに
表に出すことで、驚くほど気分が
ラクになることがあります。

とはいえ、

周りの人や他の家族のことを
考えると、感情を表にだすことは
難しいこともあるでしょう。

そういった場合は独りになれる場所へ
行って、怒りを言葉に出してみたり、
大きな声を出してみるというのも
よい方法です。

また居なくなった人を求めたり、
その人のことを想う時間をたっぷり
とってみてもよいでしょう。

ある女性は夜通し居なくなった恋人の
ことを思って泣き続けた次の日、
とても気分が落ち着いたと話して
くれました。

哀しみという感情と向き合い
深く体験したあとだと、心が
落ちつくという方は多いです。

2つめは
「小さな課題をやってみる」

です。

グリーフを抱えていると
何もかもやる気が出ない、

まったく意欲が沸かないという
状態になる人もいます。

「これじゃだめだ、
もっとしっかりしないと」

本人はそんな風に思うのですが
頑張ってもなんともならない現実を
みて余計に自分を責めたりしてしまいます。

こんな時には高いハードルを
設定せずに、本当にかんたんな課題に
取り組んでもらうことをオススメしています。

「小さな課題」のポイントですが、

・自分にとって行う必要がある事
・「少しだけ」難しいこと

を選ぶのが大切です。

例えば、
「30分時間をとって散歩してみる」
だとか、「カウンセリングを受けてみる」
ということでも大丈夫です。

誰かのためではなく、
自分にとってやった方がよいことを
課題として取り組んでみます。

そして課題は「いつかやろう」と
するのではなく、自分で期限を決めて
やってもらうようにします。

自分がいつやるのかがハッキリ
していると行動しやすくなります。

3つめは
「食事を変えてみる」

ということですが、
コーヒーなどのカフェインを
控えてみる、糖質を減らしてみる
ということです。

グリーフ専門士は医師ではないので
処方箋をだすようなことはできませんが、
刺激物を減らすというアドバイスは
問題がないでしょう。

カフェインを減らすことで気分の波が
多少減ったと報告するクライアントは
一定数います。

コーヒー好きな人は
ノンカフェインのコーヒーに
変えてみたりするのは難しくは
ないですね。

糖質に関しては砂糖や白米などの
生成された糖質を短時間にとることで
血糖値が一気に上がるということが
知られています。

私は糖質が全ての悪者のように
扱われている今の風潮には完全に同意
するわけではありませんが、

血糖値が一気に上がったあと
急激に下がることで気分も落ち込む
という調査があります。

ほどほどにしておくことで多少でも
辛い感情が起こりづらくなれば
良いと考えています。

強い自分にならなくても大丈夫

こういったアプローチは
今すぐに気分が改善するというワケでは
ありませんが、やってみる価値は
あると考えています。

特に深いグリーフを抱えている人は
とても真面目な人が多いので、

「もっと強くならなきゃいけない」

と考えて自分を余計に追い込んで
しまうこともあります。

「周りの人に嫌な思いをさせたくない」
「心配させたくない」

というふうに自分より周りを
優先してしまいます。

でも実際のところ、
そんな周りの心配なんて
しなくてもいいですよね。

だってご自身が辛いのに
周りの人に気を使ってしまって
また余計に辛くなって、、、

というのがずっと続いているんだから、
そういった緊張感を安心感に変わるような
関わりをしたいと私は思っています。

あなたがこんな人と出会ったら
その人が安心感を感じられるような
関わりをしてあげてもらえたらと
思います。

日本グリーフ専門士協会
野村優(のむらゆう)

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野村 優(のむら ゆう)

日本グリーフ専門士協会の広報担当。 協会の代表理事 井手の考えに共感して2015年からグリーフケアを広める活動を始める。 厳しい現場で働く看護師、介護士の人が使えるグリーフの知識を分かりやすく伝えるところが評価されている。 ロジカルな説明口調なので冷たいイメージを持たれるが、実際にはよく笑う人当たりの良いキャラクターで周りを和ませている。

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