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災害による感情のフラッシュバック | 不安な感情を和らげるために自分できる4つのアプローチ

災害によって起きる感情の揺れへの対処

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本グリーフ専門士協会の
井手敏郎です、

今回は、地震、洪水、火事、
その他の大きな災害に遭った人に伝えておきたい
「記念日(アニバーサリー)反応」と
いわれるものについてお話しします。

あなたの周りには、
身近な人の死を見たり、
自分自身が死にかけるような
生命の危機にさらされる経験を
した方がいるかもしれません。

そんな人に伝えておきたことが
記念日反応です。

記念日反応とは、大切な人を失ったり、
危機を感じさせる災害に遭遇した人が、
あるタイミングになると生ずる
心身の反応です。

具体的には以下のタイミングです。

クリスマス
大晦日・お正月
結婚記念日
自分の誕生日
故人の誕生日
災害があった日・・・

などです。

これらの日が近づくと、
亡くなった人と一緒に過ごしたことを
思い出すことがあります。

また気持ちが不安定になったり、
自分が死にかけた経験がフラッシュバックし、
生活や仕事に大きな支障が
出ることがあります。

ある女性は1年前に
事故で亡くなった恋人のことを
一周忌を前に何度も思い出しました。

ベットの中で寂しい気持ちや哀しい想いが
強くなり一人で苦しんだそうです。

彼女は病院で見た恋人の陥没した
顔の映像がフラッシュバックして
いたたまれない気持ちに
襲われました。

事故の相手にも怒りも抑えられないでいたのです。

そのとき自分の体に異変を感じて
まるで大地が揺れたように
足元が不安定な感覚になったといいます。

彼女は自分の車がぶつかった夢を見て、
夜中に何度も飛び起きることがありました。

そのときは汗をびっしょりかいて、
翌日は食事がまったく喉を通らず、
心臓のドキドキが続いたそうです。

そのような経験をした人は
「自分はおかしくなったのではないか」
と感じていることがほとんです。

ですが、こうした「記念日反応」は
大切な人を失った人や命が脅かされる
体験をした人には当たり前
のように起きるものです。

早い人は、その日の一ヶ月くらい前から
心と体になんらかの不快な反応が
起きる場合があります。

誰にでも起きうるものとはいえ、
本人にとっては大変辛いことでもあります。

実際に生活に支障がでる場合も多いので、
ある程度の対処法を考えておくことが
大切になります。

ここでは、
この時期を上手にやり過ごしてもらうために
重要なことを4つおさえておきたい
と思います。

あなたはおかしくない

この4つをおさえるだけでも
記念日反応はかなり軽くなるでしょう。

1つ目は、
「記念日反応が起こるということを知っておく」

2つ目は、
「その日に対処する活動や持ち物を準備する」

3つ目は、
「信頼できる人とできるだけ一緒に過ごす」

4つ目は、
「死者へのセレモニーを考えておく」

この4つをしっかり伝えることで
苦しい記念日反応に対処することが可能です。

まず1つ目としてあげた
「記念日反応が起こるということを知っておく」
について詳しくみてみましょう。

東日本大震災の後、
東京に移り住んだ友人は、
毎年3月11日が近づくと
普段はしないようなミスを繰り返し、

「いったい何やってんだ!」

と日に何度も上司に怒られました。

特に最初の2、3年は
3月に入るタイミングで
不安が募って、いつも気がそぞろ
になっていたといいます。

彼は食欲もなくなり、
少し横になることがあっても、
何かに襲われた気持ちになって
何度もとび起きるということが
重なりました。

しかし、こういった症状は、
けっして特別なものではありません。

災害を経験した多くの方にあらわれるものですから、
自分を責める必要はないのです。

記念日反応を知っていることで
「自分だけがおかしいのではないか」という、
不安を減少させることができます。

行動を決めておく

2つ目のポイントは
「その日に対処する活動や持ち物を準備する」です。

不安をさらに和らげるために、
ゆったりしたクラッシックを
ハーブティーを飲みながら聞くのもいいでしょう。

不安を吹き飛ばすくらいの
激しいロックを聞いたりすることも
対処法のひとつです。

心地よい匂いに囲まれ、
好きな音楽を聴くことは、
自分の不安な気持ちをコントロール
するために大切です。

もちろん気持ちをコントロールする方法は
音楽だけに限りません。

軽い運動をすることで心が落ち着く人もいます。

体を伸ばす、近所を歩く、
そんなことでもいいのです。

記念日反応はけっして病気ではありません。

ですから、握っていると心地いいものをもっておく
といったわずかな行動でも不安は回避できるものです。

安全基地を確保する

次に3つ目のポイントである
「信頼できる人とできるだけ一緒に過ごす」
ことについてもう少し詳しく書きます。

危険な場面に遭遇することがあっても、
誰かと一緒にいることで気持ちが
落ち着くことがあります。

「喜びは人と分かつと二倍になり、
苦しみは人と分かつと半分になる」

といったのはドイツの詩人ティートゲです。

自分は一人ではない、この人がいてくれる
という「安全基地」を確保することで、
心は自然に落ち着いてきます。

先に書いた通り、
誕生日、クリスマス、大晦日、
行事や記念日にあたるような日は、
どうしても、かつて一緒に過ごした人を思い出し
哀しくなることが多くなりがちです。

そんなときは、
事前に一緒に過ごす人を決めることが大切です。

あらかじめその相手を確保することで、
不安は大きく軽減するでしょう。

もし人が確保できない場合は、
気に入ったテレビ番組や
気に入ったビデオを見ることを
決めておきましょう。

あらかじめ決めておくことが
気持ちを支える手立てになるので
とてもオススメです。

私も直接体験した
3月11日の東日本大震災、
4月14日の熊本大地震を思い出すと
少し気持ちが揺れることがあります。

もう20年以上が過ぎた
阪神淡路大震災のことでも、
1月17日前後になると未だに私自身、
当時のことが思い起こされます。

ちなみに
阪神淡路の震災の被害が
大きくなった原因の一つは、
多くの人が地震に対する自覚が
あまりに薄くて備えていなかった
からだといわれます。

地震学者、地質学者が警告し、
自衛隊からも調査の要請が
あったにもかかわらず、
「まさか神戸に地震なんか」
と関西の多くの自治体に黙殺された
ことも指摘されています。

責任ある人が、もしその可能性に
もっと真剣に耳を傾けていたら、
被害の状況は変わっていた
かもしれません。

故人へ想いを届ける

最後の4つ目として
お伝えしておきたいのは
「死者へのセレモニーを考えておく」
ということです。

亡くなった方のことを考えると切なくなり、
なぜ自分だけ生かされたのかという
気持ちになることがあります。

人によっては
生き残った自分を責める場合もあるでしょう。

愛する人たちが旅立てば、
誰もが自分にもっとできたこと
があったのではと考えます。

亡くなった方のために
黙祷をしたり、手をあわせたりという
死者に対する祈りなどの行動は、
災害の経験者が心を落ちつかせる
きっかけになるものです。

大切なタイミングで
自分にとって大切な人に
想いを馳せることは、
人生で大切な態度です。

普段は忙しさに紛れて、
亡くなった方を忘れている
こともあるでしょう。

そんな中で、
この時間は亡き大切な人とつながる
極めて重要な期間ともいえるかもしれません。

自分にとって課題となる日は、
これからの自分を見つめ直す
貴重な機会と受け止めていきましょう。

今回は記念日反応と不安を和らげる
4つのアプローチをお伝えしました。

恐ろしい経験をした方であっても、
事前にしっかり準備することで
不安をかなり軽減することができます。

この準備は被災を経験した人のみならず、
支援者であるあなたにとっても大切なことです。

タイミングが来る前に伝える

自分に戻るための心地よい場所、
一緒にいるだけでも安心できる人、
見ているだけでホッとできるものなどを
日頃から用意しておくことは、
自分でできるグリーフケア
になります。

もしあなたの
気持ちが揺れたとき、
見たり触ったりするだけで、
少しでも自分に戻れる
アイテムは何でしょうか。

もし大事だなと思った方は、
そのまま読み流さずに
早めに準備してみてください。

まずは自分にとって役に立ちそうなものを
ノートに書き出してみましょう。

一読して支援者が「ああなるど」
という形で終わりにするのではなく、
災害を思い出すタイミングが来る前に
災害経験者はこの時期になると記念日反応がある
可能性を伝えてあげることが大切です。

そうでなければ喪失体験をした方は、
悶々としながら、たった一人で不安を
抱えてしまうかもしれません。

支援者が心にも身体にも
影響がある可能性を
きちんと伝えることで、
自分はおかしくないとわかり、
不安は少し和らいでいきます。

その上で、
その人にとって少しでも安心できる環境や
気持ちを保つための持ち物などの
準備を勧めていきましょう。

もし一緒にいてあげることができなくても、
電話やメールなどで繋がっていくことは
できるはず。

そんな思いやりのある行動と知識が
苦しんでいる方のお役に立つと思います。

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井手 敏郎(いで としろう)

井手 敏郎(いで としろう)

日本グリーフ専門士協会の代表理事。 全国各地で現場で使える実践的なグリーフケアの技術を教える講義を行っている。 アドラー心理学やユングの分析心理学、フロイトの精神分析などの他、国内外のコーチング、カウンセリングやヒプノセラピーなどについても学んでいる。現在はカルフォルニア臨床心理大学院で臨床心理の研究を行う。

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