いかがお過ごしでしょうか。
日本グリーフ専門士協会の井手敏郎です。

今日は意外と見落とししがちですが、
非常に大切な問題の一つを考えてみます。

流産で子供を亡くしたお母さんからお聞きした話です。
愛おしい子供を世に送り出せなかった哀しみは当然ですが、
とてもつらかったかことの一つが、
子供の死が「無かった」ように周りが振る舞うことだったと言います。

お腹に赤ちゃんがいたのを伝えていなければ、
周囲が知らないのは致し方ありませんが、
間違いなく授かった命が失われたにもかかわらず、
そのまま無視される状況は、とても寂しい体験です。

流産の場合、葬儀もなく、法事もないことで、
けじめがつきにくいという問題も起きやすくなります。
そのため誰も触れられず、吐き出す場も少なくならざるをえません。

当事者として知っておかなければならないのは、
周りは必ずしも冷たいのではないということです。

実際に事実を知っている場合であっても、
下手なことをいって傷つけたらどうしようという気持ちや
何と言っていいのかわからないだけかもしれません。

お腹に赤ちゃんが誕生したことを祝っていた人ならなおさらでしょう。

流産をされた方は、
病院に対する不審、
自分の行動への後悔、
次の妊娠への不安……など、
非常に複雑な思いを抱えています。

私たちが心得ておくべき大切なことは、
成長した子供や配偶者、親御さんの死と比較して、
軽く見られがちな流産も、他の死別体験と全く変わらない、
あるいはそれ以上のつらく哀しい出来事である、
という認識をもつということです。

The following two tabs change content below.
井手 敏郎(いで としろう)

井手 敏郎(いで としろう)

一般社団法人日本グリーフ専門士協会の代表理事。看護師、介護士、ケアマネジャーへの講演をはじめ、死別などによる悲嘆(グリーフ)を抱えた方の支援者を養成している。悲嘆支援の担い手であるグリーフ専門士・ペットロス専門士は国内外に約500人にのぼる。日本、アメリカ、ドイツでグリーフケア、カウンセリング、コーチングを追求。より実践的なグリーフケアを目指し、アドラー心理学、ゲシュタルト療法、ヒプノセラピーを統合した学びを提供している。現在はカルフォルニア臨床心理大学院で臨床心理を探めながら、精神科クリニックや上野駅前サロン「CROSSROAD」で毎週、遺族へのグループカウンセリングも行っている。