日本グリーフ専門士協会の井手敏郎です。

暑い夏、沖でお子さんが行方不明になり、
捜索は1週間続きましたが、遺体は見つかりませんでした。

そのご夫婦は10年たってもなお、
大きなショックを抱えておられることがわかりました。

もし遺体が見つかれば、つらい現実でもあっても
死を信じざるをえませんが、
それがなければ死を信じることさえできないかもしれません。

信じたくない気持ちは、その人を一層苦しめ続けることになります。

遺体を見ることは死を受け入れる一歩です。
それが叶わない場合でも、
葬儀をすることはその事実を認める一つのきっかけになります。

どこかで生きていればと願う気持ちがあるのは当然ですが、
けじめをつけられない場合は、
あとで余計につらい心情になることがあります。

受け入れられないとしても、
どこかで自分の想いに一度終止符を必要があるかもしれません。

葬儀は、その厳かな雰囲気や、周りの涙を通して、現実を教えてくれます。
葬儀は形式的なものではなく、
家族が死を現実のものとしてとらえ、
大切な人を失った哀しい気持ち、
また悔しさを思い切り出し切る場を作り出します。
あるいは「ありがとう」という感謝を述べる場にもなるでしょう。
そのような周囲の言葉を聞くことで、
故人のそれまでの想いに触れるきっかけになるかもしれません。

直葬のようにセレモニーをしない人や、
葬儀をシンプルにしたい人が増えている昨今ですが、
グリーフケアの観点だといろいろ考えさせられます。

多くの方と共に涙すること。
身近な人からお悔やみの言葉を聞くこと。
周囲の人が死の事実を認識して、ともに語れること。
それらは、のちのち力になることがあるからです。

私たちは見送る側であると同時に、
やがて見送られる側にもなります。
それは誰にも避けることができない道。
 
自分の周囲のグリーフを考えて、
一度、自分の葬式のあり方を見直してみることも大切です。
あなたは周りの方のためにどんな葬儀が望ましいと思いますか。

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井手 敏郎(いで としろう)

井手 敏郎(いで としろう)

一般社団法人 日本グリーフ専門士協会 代表理事/アライアント国際大学カリフォルニア臨床心理大学院にて米国臨床心理学修士号(MA)取得/著書『金融機関行職員のためのグリーフケアを意識した相続の手続きと上手な接遇方法』(近代セールス社)日本、アメリカ、ドイツで悲嘆ケアを学び、死別悲嘆の支えるグリーフケア研修や個人カウンセリングを続けている。東京都内の精神科クリニックでは自死遺族のグリーフケア・プログラムを担当。日本グリーフ専門士協会のカウンセリングオフィス「CROSSROAD」(JR上野駅から徒歩3分)やオンラインで大切な存在を亡くした方の「哀しみの保健室」(わかちあいの会)を開催。