日本グリーフ専門士協会の井手敏郎です。

これから気になっていたコミュニケーションのセミナーに行ってきます。
グリーフケアもつまるところコミュニケーションの学びだからです。

哀しいことですが、
事故で3歳の子供を亡くした方がいました。
ほんの一瞬、目を離したすきに、
子供は道路に飛び出し、車に跳ねられたのです。

車はスピード超過で走っていたといいます。
周囲の人たちもあまりの悲劇に声をかけることすらできませんでした。

そんなとき、親御さんにどう接したらいいでしょうか。

子供を亡くした多くの方が、幼い命の責任を強く感じています。

自分が気がついていれば……
ちゃんと様子を見ていれば……
あのとき声をかけていれば……
という罪悪感に苛まれているのです。

彼女もあのとき自分が目を離していなければ、
と自分を責め続けました。

現実には、一瞬の気を抜くこともなく、
完璧に子供を見ている親は多くはありません。

繰り返し話しているように、
こんなときに大切なのは、
本人が抱えている罪意識にしっかり耳を傾けることです。

周囲が何も話さないことで、
母親は周りの人はすべて自分のせいだと思っているに違いないと考えがちです。

黙っている優しさもありますが、
罪悪感を抱えている相手の場合、
周囲の沈黙は、一層その思いを深めさせ、自責の念にかられます。

実際、彼女は、夫や実母、義理の親から責め続けられるだけなく、
自分自身を責める気持ちしか浮かびませんでした。

このような場合、
むしろ積極的に関わって深い想いを聞くことが大切です。

幸い子供さんを亡くしたその女性は、
あとから事故のことを知った友人がとても親身になってくれました。

「あのとき、一人にされていたら、気が変になっていたと思います。
もしかしたら自殺していたかもしれない。何度もそれを考えたので……」
と語りました。

そんな彼女が生きる支えになったのは、

「私はあなたの味方だから」

という友達の一言だったといいます。

一人でも味方がいれば、人はなんとか生きることができる。
多くを語ることはできなくても、
応援していることだけは伝えてほしいと思います。

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井手 敏郎(いで としろう)

井手 敏郎(いで としろう)

日本グリーフ専門士協会の代表理事。全国各地で現場で使える実践的なグリーフケアの技術を教える講義を行っている。アドラー心理学やユングの分析心理学、フロイトの精神分析などの他、国内外のコーチング、カウンセリングやヒプノセラピーなどについても学んでいる。現在はカルフォルニア臨床心理大学院で臨床心理の研究を行う。