続けてご覧下さり有り難うございます。
日本グリーフ専門士協会の井手敏郎です。

支える側が、突然支えられる立場になることがあります。
介護士として責任ある立場で施設をまかされながら、
子育てをしていた30代前半の女性がいました。
ご主人と4歳と1歳前の子供さんがいる幸せな家族でした。

ところが、1歳にならない息子さんが、
乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)で亡くなったのです。

SIDSはそれまで元気だった赤ちゃんが、
事故や窒息ではなく眠っている間に突然死亡してしまう病気です。
日本では発症頻度はおよそ出生6000~7000人に1人と推定され、
生後2ヵ月から6ヵ月に多いといわれます。
平成23年には全国で148人の赤ちゃんがこの病気で亡くなりました。

原因はまだわかっていませんが、
男児、早産児、低出生体重児、冬季、
早朝から午前中に多いことなどが指摘されています。

彼女は支える立場が一転し、
誰かに支えられなければ生きられないようになりました。

しばらくして、実母が一緒に住むようになりましたが、
5年たっても気持ちは落ち着かず、
次の妊娠も考えられなかったと言います。

原因がわからないだけに、なにか自分に欠陥があるのではないか。
また同じことが起きるのではないかという不安からでした。
子供を失った場合は、ほかの多くの喪失以上に長引く傾向があります。
まるで自分が死んでしまったかのように、心を打ち砕かれたのです。

そんな彼女の心がほんの少しだけ緩んだ友達からの言葉がありました。
それが、「自分にもっと優しくしていいと思う」でした。

動きがとれないながらも、
彼女を一層追い込んだのは、
仕事に復帰しなければという思いでした。

もう一人の子供の面倒も、十分自分でみることができず、
病気がちの親の世話になることとなり、
ただ情けなく、泣いてばかりだったそうです。

そんなとき、職場の友人がくれた
「自分にもっと優しくしていいと思う」というメールで、
重荷をほんの少しおろせたといいます。

あれをしなければ、
これをしなければと、
できないときに限って強く感じるものです。
特にかつて仕事ができたと自負する人はなおさらかもしれません。

ずっと走り続けられる人はいません。
人には止まっていいときがあります。
むしろ止まらなければならないときがあるといっていいでしょう。

大丈夫。
休んでもいい。
無理をしなくてもいい。
自分にやさしくしてもいい。

それはあなたがどんな立場であっても
必要なことだと思ってみてはいかがでしょうか。

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井手 敏郎(いで としろう)

井手 敏郎(いで としろう)

一般社団法人日本グリーフ専門士協会の代表理事。看護師、介護士、ケアマネジャーへの講演をはじめ、死別などによる悲嘆(グリーフ)を抱えた方の支援者を養成している。悲嘆支援の担い手であるグリーフ専門士・ペットロス専門士は国内外に約500人にのぼる。日本、アメリカ、ドイツでグリーフケア、カウンセリング、コーチングを追求。より実践的なグリーフケアを目指し、アドラー心理学、ゲシュタルト療法、ヒプノセラピーを統合した学びを提供している。現在はカルフォルニア臨床心理大学院で臨床心理を探めながら、精神科クリニックや上野駅前サロン「CROSSROAD」で毎週、遺族へのグループカウンセリングも行っている。