おはようございます。
日本グリーフ専門士協会の井手敏郎です。
 
札幌に来ています。
今回は介護施設からご依頼頂き、
三週連続のグリーフケアの研修です。
限られた時間でお伝えするのは大変ですが、
熱心に聞いてくださり嬉しく思いました。
 
ある男性から相談を受けたことがあります。
妻を失ってなにがつらいかというと、
ほんの些細なことが話せなくなったことだといいます。
  
昼食が不味かった。
電車の中で変わった人がいた。
会社で嫌なことがあった。
道でこけた。
「あのさ~」
と普段なら何気なく妻に言っていたことが、
何にもいえない寂しさが居たまれないと。

配偶者を失って特に寂しさを感じるのは食事のとき、
と挙げる人が多くいます。
最近は一人で食べやすいように、小分けのものも増えていますが、
そもそも一人で食べたくないのです。

ある男性はテーブルに座るのが苦痛になり、
冷蔵庫の前で、取り出したものをいつも立ったまま食べていました。
「テーブルに食事を並べるだけで、妻のことを思い出してつらくなるから」
と語っています。

こんなときに友として、
あるいは専門家としてできることは何でしょうか。
気が置けない友達と普段から接することでも
彼の「語れない寂しさ」は軽減します。

このクライアントの場合、
人との接触を拒んでいるのではなく、
むしろ接触のない寂しさがつらいのです。

奥さんの代わりをすることはできませんが、
些細な会話ができない寂しさを語っているのであれば、
あなたが些細な会話ができる相手になることはできるかもしれません。

くだらないことでも、こちらから携帯メールやLINE、Facebookで
メッセージを送ることが相手の大きな慰めになることもあるでしょう。
あのとき一緒に食べたランチが本当に救いだったという人もいます。

その点、友人の支えは、孤独を乗り越える力になりえます。
ただ新たなパートナーを求めるべきか否かは
少し慎重になる必要があるかもしれません。

配偶者を亡くしたばかりのときは、
再婚なんてとても考えられなかった気持ちでしょうが、
時間がたては、心を許せる誰かに傍にいてほしいという気持ちは起こるものです。

知っておかなければならないのは、
新たなパートナーは、
亡くなった配偶者の穴埋めではありません。

元の夫の代わり、
あるいは穴を埋めてくれる相手だと思うと苦しい関係になることがあります。
前の夫はこうしてくれたのに、あなたはなんで、となりかねないからです。

おせっかいかもしれませんが、
再婚はあくまで一人の人間として相手を見ることができ、
この人と生涯を添い遂げたいという相手の良さに気づいたときに、
決断すべきことだと感じます。

もし相談を受けたときは、
このことを踏まえて、
あなたの考えを伝えてはどうでしょうか。

まずはあなたにできることは、
ときどきでも、ほんの些細な会話をすること。
十分なことはできなくても、相手の「大きな力」になるはずです。

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井手 敏郎(いで としろう)

井手 敏郎(いで としろう)

一般社団法人日本グリーフ専門士協会の代表理事。看護師、介護士、ケアマネジャーへの講演をはじめ、死別などによる悲嘆(グリーフ)を抱えた方の支援者を養成している。悲嘆支援の担い手であるグリーフ専門士・ペットロス専門士は国内外に約500人にのぼる。日本、アメリカ、ドイツでグリーフケア、カウンセリング、コーチングを追求。より実践的なグリーフケアを目指し、アドラー心理学、ゲシュタルト療法、ヒプノセラピーを統合した学びを提供している。現在はカルフォルニア臨床心理大学院で臨床心理を探めながら、精神科クリニックや上野駅前サロン「CROSSROAD」で毎週、遺族へのグループカウンセリングも行っている。