日本グリーフ専門士協会の井手敏郎です。

最近ヨガを続けています。
それは自分の心と身体の状態に
しっかり耳を傾けたいという気持ちからでもありました。
今回は内なる声を聞きましょうという話です。

「眠れない日々が続いていたのに、急に眠たくて仕方なくなった」
「自分はおかしくなったような気がして不安だ」
という夫を亡くして半年という女性と話をしたことがあります。

彼女の身体に一体何が起きているのでしょうか。

この女性は、朝10時なっても起きることができず、
トイレを済ませたあと、また14時まで寝続けました。
最低限動くとまた夜まで布団から離れられない日が続きました。

たしかに喪失体験をした直後は、
死の事実に混乱をしたり、
これからを考えると不安になったり、
不眠状態が続くことが少なくありません。

混乱期をある程度過ぎると、
あるタイミングで身体に大きな変化を生じ、
どうしようもなく眠たいということがあります。

人によってはうつ状態になったと心配になるかもしれません。
しかしこの状態はうつ症状というよりは、
身体が休息を必要としている局面と考えたほうがいいでしょう。

大切な人を失うという恐ろしくショックな出来事を経験したのです。
心身ともにクタクタになった状態で、
通夜、葬儀、その後もさまざまな手続きを強いられ、
心ない人から聞きたくない言葉を耳にしたかもしれません。
すでに心身のエネルギーが枯渇してしまっているのです。
身体を休めたい、すべてから離れたいと感じるのは当然のこと。

心と身体が十分回復するためには、長期の休養が必要です。
このような時期を経るからこそ、
次のステージに進むことができるのです。

見たくない、聞きたくない出来事をつきつけられ、
現実から逃避したいという気持ちから
睡眠に影響がでるのはごく自然な反応でしょう。

むしろ、家族を失っても、仕事も休まず、
頑張っているほうが心配であり、
布団から離れられないほうが正常なのです。

身動きがとれないことで、
周りに迷惑をかけると懸念する人もいます。

しかし、思いも寄らない出来事に押しつぶされたり、
エネルギーを大量に放出した今、
疲れきった心身を回復させる必要があります。

もっとも気を遣うべきは他人のことではなく、
自分自身であることを伝えてください。

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井手 敏郎(いで としろう)

井手 敏郎(いで としろう)

一般社団法人 日本グリーフ専門士協会 代表理事/アライアント国際大学カリフォルニア臨床心理大学院にて米国臨床心理学修士号(MA)取得/著書『金融機関行職員のためのグリーフケアを意識した相続の手続きと上手な接遇方法』(近代セールス社)日本、アメリカ、ドイツで悲嘆ケアを学び、死別悲嘆の支えるグリーフケア研修や個人カウンセリングを続けている。東京都内の精神科クリニックでは自死遺族のグリーフケア・プログラムを担当。日本グリーフ専門士協会のカウンセリングオフィス「CROSSROAD」(JR上野駅から徒歩3分)やオンラインで大切な存在を亡くした方の「哀しみの保健室」(わかちあいの会)を開催。