日本グリーフ専門士協会の前川美幸です。

私は医療短大卒業後、一般内科病棟に看護師として勤務した後、老人保健施設でのケアマネジャーを経て、訪問看護、在宅診療などおもに高齢者ケアの現場に従事してきました。

グリーフケアに関心を強く持ち始めたのは、終末期を在宅で過ごす患者さんと接する機会が増えた30代半ばすぎからです。私自身も大切な身内を病で失い、どちらも臨終に間に合わなかった経験から、長きにわたりグリーフ(喪失悲嘆)を抱えてきました。

そのような体験をふまえ、大切な人との死別において、後悔しない最期を迎えるために、知っておきたいことを、在宅看護・介護場面を中心に、シリーズでお伝えしていきます。

 

介護保険制度が導入されから、早いものでこの春で18年が経過します。その間、介護保険の理念である「自立支援」に基づき、予防重視型システムの転換から地域包括ケアシステムの実現と、度重なる改正が行われてきました。

今後の日本の高齢化の進行は早く、2025年には、団塊の世代が一斉に後期高齢者となり、現在約130万人と言われる年間死亡者数は、約160万人以上に膨れ上がると予測されています。(厚生労働省 平成28年(2016)人口動態統計の年間推計より)

支援を必要とする人が一気に増大する中、医療・介護・生活支援が一体的に提供される、地域包括ケアシステムが必要とされ、ケアマネージャーの役割もまた、今後ますます多様化します。

 

●悲嘆の局面を理解する

在宅での看取りがこれから本格的に増加の一途をたどる中、『後悔しない最期』を共に迎えるために、ご本人および家族、また、サービス提供にあたるスタッフが知っておくべき、死別悲嘆における心理過程や、援助のあり方とはどのようなものなのでしょうか。

余命宣告を受けた本人が対峙する心理についてのさまざまなモデルを当協会が独自にまとめたものを紹介します。

 

1)肉体の苦痛に対する恐怖

特にガンなどのターミナル期においては、疼痛の緩和を24時間体制で行う場面が多くなります。医療と介護の連携を密にしながら、時に家族、介護職が、専門性の高い知識や技術を知り、身につけることが必要かもしれません。

ケアマネージャーとして、どの職種にどこまでの役割分担を依頼するのか、医療依存度が高くなる疼痛管理ケアなどを問題なく継続されているかの本人や家族へのモニタリングなども重要になってきます。そのモニタリング後は、医療職へのフィードバックもご本人の支援につながる大切な連携調整です。

また最近では、医療以外の民間療法やインフォーマルなサービスによる疼痛緩和も注目を浴びています。アロマテラピーやマッサージ、あるいはその他特殊な療法など、それらが現在受けている治療と拮抗しないかどうかについては、家族から主治医に確認することかもしれません。すべてのサービスがどのように提供されているかを包括的に支援する立場にあるケアマネージャーが相談される機会も増えると考えられます。

地域においてどのような疼痛緩和における民間サービスが提供されているか、他の事業所や関連機関とも連携を図りながら、正しい情報の収集・把握に努めることが求められます。

痛みを抱えていても、言葉にできず我慢している人も少なくありません。「今日の身体の具合はどうですか」と積極的に尋ねることで、医療職と情報を共有していきたいところです。本音で痛みの訴えや相談を伝えていただける存在となることは、関係性の構築がなされている大きな目安です。

 

2)寂しさと孤独に対する恐怖

多くの人に囲まれていても、自分の気持ちをわかってくれる人はいないと感じている方も多いでしょう。そのような心情を訴えることができる関係性を作ることも死にゆく立場にある人にとっては大切な心のケアへとつながります。死に面した人が、余命を宣告されていない人からは到底想像できないような孤独に打ちひしがれるのは、人間として当然の反応です。

家族に訴えがたい心情の吐露を誰が請け負えるのでしょうか。ターミナルケアやグリーフケアに対する理解だけでなく、本人との関係性や支援者自身の死生観・人間性が問われる場面でもあります。すべての領域に関わるサービスの支援者として、プランの作成だけではなく、ケアマネージャー自身がその苦悩にどこまでも寄り添い、どんな悩みであってもそのまま受けとめるという受容姿勢を示すことが求められます。

同時に、これまでつながっていた周囲の人や社会と切り離された感覚が強いことを意識し、傾聴できる人、音楽を奏でられる人、友人の訪問など、さまざまな社会資源との接触をできるだけ勧め、家の中に「小さな社会」を作ることが、孤独と向き合う利用者の力となります。

 

3)尊厳と迷惑に対する恐怖

日に日に衰える体力、低下していく判断力、それまでできていた日常的な動作が段々とできなくなることに対するショックは、自身の存在意義の喪失にそのまま直結してしまいます。

とりわけ思うように歩けなくなること、また排泄に関わるケアを他人の手に委ねなければならないことは、羞恥心も加わり、「こんな世話を受けるぐらいなら死んだ方がマシ」「早くあの世に逝きたい」などと言う方も多く、これまでのセルフイメージの崩壊、家族への介護負担への心配などから一気に抑うつ的になってしまうことにもつながりかねません。

本人なりにとても気を遣い、少しでも介護者の負担を軽減したいと、苦痛の訴えやケアへの要望を我慢してしまうこともあります。そのような心理に陥りやすいことを理解し、遠慮なくその時々のニーズを伝えてもらうよう伝えたり、どんなケアが有効であるかを援助者側から予測し取り入れたりするなどの配慮が必要です。

また、多くの方がその方なりに、少しで援助者側が楽になるよう協力姿勢を示して下さるものです。具体的には、援助者が体位交換等を行う場合に、体の向きを変えやすいよう、本人も力を入れて下さるようなことがよくあります。その際には一回一回、丁寧に「ありがとうございます」と声をかけていくことが大切です。

どんな状態であっても人は他者に対し貢献し役立つ存在でありたいというニーズを根源的に持っています。そのニーズを少しでも満たすために、本人なりの配慮に細やかに気づき、感謝を示すことが大切です。どのような場面でも、「今のあなたと一緒に過ごす時間こそかけがえのない宝物」という気持ちを温かい笑顔と言葉で伝えていきましょう。

死を前にした本人が対峙する心理には、あと2つ、4)やり残したことに対する不安、5)罪意識や来世に対する不安、があります。それらについては次回に詳しく紹介します。

 

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前川 美幸(まえかわ みゆき)

前川 美幸(まえかわ みゆき)

日本グリーフ専門士協会理事。老人保健施設での介護支援専門員、訪問看護ステーションの立ち上げを経て、現在は終末期医療に従事。看護・介護の現場の両面からグリーフケアを伝えている。日総研出版『達人ケアマネ』に2017年6月から2018年6月にかけ、グリーフケアに関する連載を担当。