超高齢社会から多死社会へ。

早いものでもう2019年も終わりに近づきつつあります。2025年頃には「戦後の第一次ベビーブーマー」である団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)に達し、医療・社会保障・介護などの社会保障費の急増が以前より懸念されています(2025年問題) 

もはや「少子高齢化」ではなくれっきとした「少子高齢」社会、さらには「超高齢社会」、その先にある「多死社会」へと、どんどんと未来予測が困難な社会へと変遷していく流れに歯止めがきかない現実があるようです。

戦後~高度成長期(1970年代)にかけては、日本人の年間死亡数はだいたい70万人台で推移してきました。それが2014年度には約127万人もの方がお亡くなりになられています。2030年に年間死亡数はおそらく160万人を超えると予想され、2050年ごろまで160万人台で推移していく見込みであるそうです。

多死社会へのカウントダウンが静かに、しかし着実に近づく中、「終活」が「就活」以上に大注目を浴びるようになってきました。ただただ延命のための治療に疑問視を持つ人も増えました。「高齢となった親を子である自分はどう看取るか」「自分自身の介護が必要になったら誰に世話をしてもらうのか」「どこに自分の終の住処を見出すべきか」といった選択肢をみずから主体的に考える人が特に団塊世代を中心に増え広がっています。

もう何十年も前から、介護を担う人材の不足が問題視されていますが、今後はそのようなマンパワーのみならず、ハード面での不足も深刻な問題となってくるでしょう。現存の数だけでは「火葬場」や「遺体安置所」が圧倒的に不足し「待機」を迫られるーご遺体をお預かりするサービス等、新たなシステムでの保管が必要な地域が、全国的に増加の一途を辿るでしょう。

「4人にひとり」から「2人に1人」

私が中学生の頃、社会の教科書のイラストには、ひとりの高齢者を4人の働き手が支える図が掲載されていました。2014年において、日本の総人口はおよそ1億2,708万人、そのうち65歳以上は3,300万人ほどです。今の65歳は「前期高齢者」と定義づけられるとはいえ、まだまだ元気で働き盛りの方も相当あります。ですが仮に「65歳以上は働き手としては引退」と見なした場合、「高齢者を何人の労働者が支える?」問題は、約2人に1人が支えることになるのだそうです。さらに2025年には、日本の65歳以上人口は一気に3,657万人ほどにのぼり、高齢者ひとりを労働者世代(20歳から64歳)1.8人が支えることになると推計されているそうです。

団塊世代の子ども世代である私達が高齢者となるおよそ20年後には、いったいどうなっているのか?想像するに、今から起こり得る変化に迅速にかつフレキシブルに対応していかなければならないと思うばかりです。

当協会は2015年より正式に一般社団法人「日本グリーフ専門士協会」として発足し、これまでにすでに500人近い方にグリーフ専門士・ペットロス専門士の資格を取得して頂きました。いくつかあるコースの中から今回は、2019年の春夏にBASIC講座を修了された3名の方の感想を、ご本人のご了承のもとに紹介させて頂きます。


人それぞれ背景や環境が違い、適切な対応も個々に違う、正解がないんだという事がわかりました。同時に、誰かに話すことで少しだけ心が軽くなる事もあることを実感しています。

当事者本人が自身を責める事も、自己防衛本能のひとつであり、それを否定はしてはいけなくて…どの状況下でも、その個人を尊重し、否定や肯定のジャッジを他人がしてはいけないと改めて感じました。

どう対処するかより、本当にその人の目線や立場で思いやる気持ちが大切なんだと感じます。行間を読む、沈黙を大切にするという発想が、とても目から鱗でした。

身近な人は勿論、何かのご縁で出会った方など、接する事がある方すべてに幸せになって欲しいと思います。グリーフだけでなく傾(敬)聴を大切にする姿勢は、どの場面でも活かせていけると思いました。いろいろな場面でどんどん活かして活きたいです。

近藤明美様(2019年6月グリーフ専門士・ペットロス専門士BASIC修了)

近藤さんのおっしゃるように、人それぞれにその人生を過ごしてこられた経緯や背景がちがうからこそ、大切にされてきた信条や価値観もまさに人それぞれであることを実感します。価値観や人生観そのものに正解・不正解がないように、それらをふまえてその心情に寄り添う対応にも、決まった答えはないことを私も改めて痛感しました。

グリーフを抱えておられる方に接する際に、支援する側として苦しく感じるもののひとつに『自責の念』や『罪悪感』があります。とくに亡くされた対象が、まだ幼いお子さんであった場合「親としてどうしてもっと守ってやることができなかったのか?」という後悔や無念に長年苦悩される方は少なくありません。

また病気で配偶者を失い「いちばん近くにいたのに、これだけ長く連れ添ってきたのに、どうしてもっと早くに気づいてあげれなかったのか?」という自問自答にずっと煩悶されてこられた方にも多く出会ってきました。その悔いは亡くされた対象がなんらかの診断や余命宣告を受けた時からすでにつきまとうものですが「なぜもっと早く病院に連れてこななかったの?」という詰問を親戚または医療従事者にかけられたことにより、さらに深刻にいつまでも胸に突き刺さっている例にも残念ながら私は幾度が遭遇しています。

また最近は、家族同様に愛情を注いでいた動物に先立たれ、悲しみに暮れる方も多くあります。動物は自分で何かを言葉で訴えることができないゆえに「飼い主の自分がどうして異変にもっと早くに気づいてやれなかったのか?」とずっと悔やまれる方も相当多いようです。

そうした罪の意識や自責の念に触れると「なんとか早く楽になってもらいたい」と思わずにいられない心情にこちらも駆られることがあります。ですが「どうしてもっと!」の後悔は失った対象が大切であったなればこそ。深い愛情の証とも言えます。

ですからどのような後悔や自責の念に対しても、肯定・否定のどちらかに偏ることなく、できる限りのノージャッジの公平な心持ちで、当事者の気持ちにただただ丁寧に寄り添うことを私も心がけていきたいです。(担当講師:前川美幸より)

これまでは自分自身には特に大きなグリーフはないと思っていましたが、学習を通してひとつひとつ丁寧に考えていくことで誰しもが多種多様のグリーフを持ちながら生きているという現実を知りました。素直に自分の気持ちを他者に伝える難しさを研修の中で感じましたが、それは患者さんや他人も当然持っている感情であり、自分だけがグリーフケアの手法を学んでも意味がないことを身をもって感じました。

自分の苦しみや悲嘆を表出することだけでも人はエネルギーを使うものであり、だから待つ姿勢が大切であること、無理に話せなくてもよいこと、グリーフをゼロにするのがゴールではないということを学びました。

これまではグリーフケアというと、何か相手に気の利いたことばを伝えて、前向きな言葉を聞き出して帰らなけらばならないという気持ちが強くありました。これからは、相手の抱える伝えづらさに配慮しながら少しだけでもグリーフのガス抜きのお手伝いができればという気持ちで患者さんのもとに向かいたいです。

山口久子様 (2019年6月グリーフ専門士BASIC<zoom>講座修了) 

山口さんのように対人援助職として長年ご活躍されてきた方が、グリーフケアを学ばれる中で「自分自身のグリーフに初めて気づきました」「私も喪失悲嘆の当事者であるとあらためて自覚しました」と告白される場面に私も何度も立ち会ってきました。

喪失悲嘆は死別に限らず、あらゆる喪失体験にともなう自然な反応です。病気や障害の診断を受けることもまた、人生におけるとても大きな喪失体験と言えます。毎日多くの患者さんと接していると「ひとりひとりの人生にとっての大変な岐路に立ち会っている」実感が次第に麻痺してしまい「こんなケースはよくあること」とどこか他人目線なドライな感覚でやり過ごしてしまう態度は、ベテランになるほどに対人援助職が陥ってしまいがちなバーンアウトの代表例かも知れません。

今はたまたま患者さんとそれをケアする側という立場の違いがあっても、お互いにいつ何を失うかわからない生身の人間である。そうした自覚があるかないかで、グリーフを抱える状態にある人への対応は大きく変わると思います。

また「私はケアする側」の自認が高ければ高いほど、他人に対し素直に弱音を吐いたり、内面的な痛みについて語ったりすることはハードルが高くなりがちです。ですが、その壁を乗り越え誰かに何かを吐き出せた時、心がスーッと軽くなる。そうした実体験を大切に、お互いに出来るだけ気持ちを共有できる関係性を築きあげようとすることは医療や介護の現場では特に大切な意識改革であるように私も感じました。

「自分だけが知っていても仕方ない、皆に広めなければ!」という想いは、責任感を持って患者さんによりよいケアを、と願う山口さんなればこその情熱だと思います。

そしてそのような意識を持って日々、実践の場で奮闘されている方は特に、たくさんの喪失悲嘆を一身に抱えやすくていらっしゃるだろうと思いました。まずはこの学びがそれを学んでくださった方ご本人の人生にとって、なんらかの癒しになってくれることを私達は念じ願いたいところです。

難しい局面で目に見える結果を求められる第一線で尽力されている方の中には、「目の前の相手の苦悩をなんとか軽く、できればゼロにしなければならない」という見えない呪縛に苦しまれる方が多くあります。

心の内側にある様々な喪失悲嘆をほんの少しでも共有できたならば、本来その人が持っている自分自身の力で少しずつその人らしさを取り戻すことができる。

そのような確信をよりどころとされている山口さんとの関わりによって、気持ちが楽になる患者さんは今までもこれからもたくさんいらっしゃるだろうなぁと、私もありがたく感激しています。(担当講師:前川美幸) 

グリーフという言葉は聞いたことがあっても,全く知識がない上に、深い離別体験を感じたことのない自分が、悲嘆を抱える人に対して一体何ができるのだろうか…と思っていました。

グリーフ=死別をメインとして捉えていましたが、今回学びを得たことで,死別以外でも日常に存在するあらゆる事象にグリーフが結びつくことを理解しました。また、自分自身がまさにグリーフスパイラルの渦中にいたことに気付くことができました。グリーフの局面を学んだことで、分からない状態に対する不安が解消されました。

相手(サポートをする側と受ける側)との信頼関係の構築は、共に過ごした時間の長さではなく、その場やその空間を作りあげている空気感であると私は思います。

相手の存在価値を認め、相手が望む形でのサポートをするために、“あらゆる感情を吐き出せる安全安心な場・空間・時間”を作りあげられる存在になれるように、人と関わっていきたいと思っています。「なんか安心した」「なんかいい感じ」「なんか分からないけど落ち着く」「なんか…」そんな気持ちを感じられるような存在になりたいです。

 ひろ様 (2019年7月 グリーフ専門士BASIC<対面>講座修了) 

「喪失悲嘆について学んでみて初めて、自分自身もその渦中にあったことに気づいた」という、ひろさんのこの言葉の深淵さをずっと考えてきました。ひろさんはきっと、心の奥底にある痛みや不安をご自身で懸命にカバーされながら、自分で自分を勇気づけたり励ましたりしてひたむきに生きてこられたのだろうと感じます。

心の痛みが深いからこそ対面するにはたくさんの力が必要であり、たくさんの自助努力によって様々な条件をご自身で整えてから、その自覚が生じるという方に、これまで私はたくさん出会ってきました。

「自分は喪失悲嘆の当事者ではないから、その心情に寄り添うに必要な知識やスキルを身につけたい。」サポートする側としてよりよい自分であろうとして学びを深められた結果、自分自身がどんな救いを求めていたのか?に気づけたことが深い癒しをもたらす。

そのような実体験が得られたことで「これまでとは全くちがうケアの在り方に気づいた」「信頼関係の築き方が変わった」と仰る方もたしかに多くあると実感しました。

「長く一緒にいるから一番理解している、わかっている」

親友同士、夫婦、親子関係に起こりがちな誤解のひとつではありますが、実はこの自分自身にもあり得るミスコミニュケーションかも知れないですね。

その場にある人の誰もが、安全・安心に自分のあらゆる感情を吐き出せる。そこにいるだけ自分自身の存在価値が大切にされ、心地よく穏やかで満たされる「空気感」を作り出すために何ができるか?

私もこれから先ずっとその究極ゴールを目指し、日々研鑽していきたいと強く思いました。大切な気づきをありがとうございます。(担当講師:前川美幸)

<編集後記>

今回は私が2019年春〜夏に担当させて頂いた方の中から3名の方のご感想を紹介させて頂きました。今後とも様々な受講後のフィードバックを少しずつ紹介していきたいと思います。

また現在、日本グリーフ専門士協会では①グリーフケア入門講座②グリーフケアサロン体験をwebにて無料開催しております。それぞれの申し込みページからお気軽にご参加ください。

グリーフサロン体験(webにて無料開催)のご案内

グリーフケアのオンラインサロンもWEBで体験することができます。(死別・離別の当事者向けのプログラムです。必要と感じられる方は下記からお申し込み頂けます。

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdmswJoTGgHpg4qtTabm4fBVWSe7AVTX_07eWta9TC9dWcdlg/viewform?fbclid=IwAR0ookBDrisdutKT6P7tBQhV2GaeEdptUsdIlvWiwOdRUg6TokBONagj18c

対面でのグリーフケアCafeも各地で開催されています。

全国各地でのグリーフケアカフェも随時開催しています。会場費やお茶代などの実費のみを集める(500円〜1000円程度)か、無料にて開催しています。

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前川 美幸(まえかわ みゆき)

前川 美幸(まえかわ みゆき)

日本グリーフ専門士協会理事。老人保健施設での介護支援専門員、訪問看護ステーションの立ち上げを経て、現在は終末期医療に従事。看護・介護の現場の両面からグリーフケアを伝えている。日総研出版『達人ケアマネ』に2017年6月から2018年6月にかけ、グリーフケアに関する連載を担当。